![]()
2007.04.02 Monday
プラチナ、金・・・・そして銀
みなさんこんにちは。
このブログで、私はコモディティについて時々書かせて頂いておりますが、 今回は『銀』をテーマに書いてみたいと思います。 皆さん金やプラチナなどについては、投資対象としての知識をお持ちだと 思いますが、銀を投資対象として見られる方は少ないのではないで しょうか(実は私自身もそうで、一昨年、ご相談者からの質問を きっかけに勉強を始めました)。 現在の銀の価格は、1オンス(約30グラム)あたり13ドル半ばですが、 例えば今から34年前の1973年、銀の1オンス当たりの価格は何ドルだった と思われますか? 答えは2.56ドルです、2007年2月の銀の平均価格は13.94ドルですから、 この間約5.4倍になっています。 5.4倍と聞きますと、とんでもない上昇率のように思えますが、年間平均 に換算しますと5.2%の上昇率に過ぎません(ちなみに1973年末の日経平均 株価は4300円で、こちらは現在は約4倍です) さらに貴金属というくくりで他の商品も見ておきますと、例えば ・金(97.22ドル/オンス → 664.92ドル/オンス) ・プラチナ(156.04ドル/オンス → 1206.61ドル/オンス) 注)いずれも左側は1973年の年間平均、右側は2007年2月の月間平均) となっており、この間の上昇率は金で約6.84倍、プラチナは約7.73倍。 上記のように、1973年から2006年の33年間という長期でみれば、金やプラチナの 上昇率に比べ、銀の上昇率は見劣りがするように思えます。 ところが、2002年以降に限ってみれば、少し違った景色が見えてきます。 ・金(332.61ドル/オンス → 664.92ドル/オンス) ・プラチナ(596.79ドル/オンス → 1206.61ドル/オンス) 注)いずれも左側は2002年12月の月間平均、右側は2007年2月の月間平均) 金はこの4年強で約1.99倍、プラチナは約2.02倍となっておりますが、これに 対し銀はといいますと ・銀(4.658ドル/オンス → 13.946ドル/オンス) となっており、同期間に約2.99倍に上昇、金やプラチナに比べ突出して高い 上昇率を示しています。 さて、これらのデータから私達は一体何を読み取り、それを資産運用に どのように活用していったらよいのでしょうか。 最初の30年間、金やプラチナに対して一貫して弱かった銀が、 どうして2002年を境に上昇基調を強めたのでしょうか、まずはその理由に ついて考えてみたいと思います。 銀の用途は現在 1.工業用(41.8%) 2.宝飾品用(28.2%) 3.写真フィルム用(20.6%) 4.投資目的(4.8%) 5.コインやメダル用(4.7%) (「ワールド・シルバー・サーベイ 2005」より) となっています、日本人は一般的に銀を宝飾品としては見ませんが、 欧州では庶民の宝飾品として根強い人気があるようです、写真フィルム用が 依然として20%と大きな割合を占めていますが、この部分はいずれデジカメ にとって代わられますので、用途としてはこれから減少してゆくでしょう。 それより大切なのは1の工業品用途です、あまり知られていませんが、 実はこれが銀の最大用途で、携帯電話、携帯オーディオなど、微細な加工が 要求される製品では、金とならび隠れた原材料として欠かせません。 これら用途を見る限り、写真フィルム用途はむしろ減少傾向が予想され るなど、取り立てて銀の価格を上昇させる要因は見当たりません、ただ、 投資目的で年金基金等がETF経由で銀の保有を強めるでしょうから、 銀そのものにとっては、好材料になるでしょう。ただし、それは 金やプラチナ(プラチナのETFはありませんが)も同じこと、銀が 他の貴金属に対して強くなる要因とは思えません・・・ では、ここ数年の銀の強さはどこから来ているのでしょうか。 私はその答えは、『埋蔵量と需要予測』の関係にあると思います。 今年2月15日、「独立行政法人 物質・材料研究所」が「2050年までに 世界的な資源制約の壁」と題するレポートをまとめました。 ttp://www.nims.go.jp/jpn/news/press/press178.html 注)「独立行政法人 物質・材料研究所」:科学技術庁傘下の2つの 研究所が合併し平成13年に設立された独立行政法人。 これによりますと「2050年までに多くの種類の金属が現有の埋蔵量 ではまかないきれなくなり、中には埋蔵量の数倍の使用量が予想される 金属もあることがわかった」とのこと、「特に、金、銀、鉛、錫 の(2005年以降の)累積使用量は2020年の時点で現有埋蔵量を超えることが 予想される」としています。 要するに、いままでも「埋蔵量が枯渇する」という程度のことは言われて きたが、BRICs などの成長を想定した上で再計算してみたら、危機的な 状況に陥ることが解った、とまあこういうお話です。 さらに、本レポートでは各金属ごとの「埋蔵量」と「使用量」の予想を グラフ化しているのですが、それによりますと今後最も状況が厳しいのは 銀で、「埋蔵量」を1としますと、今後2005年から2050年までの予想「使用量」 は10.3となるとのこと、言い換えますと、今後5年程度で現在確認されている 「採掘可能な銀」は掘り尽くされてしまうという事になります。 もっとも、これは2005年から2050年まで平均的に銀が使用されると考えての お話しですし、銀の価格がさらに高騰することによって、今後採掘可能な 鉱山も増えて行くでしょう、あるいは廃家電からの回収技術、さらには 他の金属での代替技術も開発されるに違いありません。 ですから決して悲観することもないと思うのですが、ここのところ 銀や他のレア・メタル類の価格が急騰しているのは、このように 新興国の経済成長を前提とした『埋蔵量と需要予測』の関係を、市場が 徐々に織り込みつつあるからではないでしょうか。 金やプラチナもいいと思いますが、『銀』をポートフォリオに加える こともご検討になってみてはいかがでしょうか。 では 今回はこのへんで。 ![]() |